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初期から晩年までの作品が一堂に会する、初めての回顧展
並河靖之(なみかわ・やすゆき 1845-1927)の没後90年にあたる記念展が、東京都庭園美術館で開催されています。
明治の超絶技巧の数々を知ってから、実物を見たくて見たくてたまらなかった並河七宝の世界。
並河靖之の七宝を常設展示してある美術館は京都にある「清水三年坂美術館」と「並河靖之七宝記念館」です。
並河靖之の七宝と「清水三年坂美術館」「並河靖之七宝記念館」についてはこちらに詳細を記載してあります。
京都へ行かなければ見ることができない並河七宝を、東京で見ることができるのです!
しかも、あの優雅で美しい東京都庭園美術館のアール・デコの館が会場です!
そして、宮内庁三の丸尚蔵館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館などに収蔵されている、初期から晩年までの作品が一堂に会する、初めての回顧展なのです!
これはもう行くしかありません♡
東京都庭園美術館の会場に着いたらまずはこちらへ!
会場の入り口を入ったら、左手の展覧会場へは向かわずに反対方向の右手へ進みましょう。
右側にロッカールームがありますので、荷物をお預けになっていただけますが、そこで立ち止まらずにさらに進んでそのお隣のウェルカムルームへ入ってください。
入るとすぐに係りのお姉さんが座っていますので、「ミュージアムスコープ(単眼鏡)を貸してください」と一言お願いしてみましょう。
すると、なんと無料でミュージアムスコープ(単眼鏡)を借りることができます。
ただし、先着50名までなので混みそうな日はお早めに。
もうね、これがあるとないとでは大違い!
並河七宝の作品は、写真で見ると割と大きめなイメージをお持ちになるのではないかと思いますが、実際は500mlのペットボトルよりも小さい作品のほうが多いのです。
そして、並河七宝の最大の特徴である有線七宝は、薄く細長いリボン状の銀線を立てながら図案を形作って本体の金属に貼り付け、その銀線で描かれた輪郭線の中に釉薬を流し込んで焼くという技法です。
この銀線で形作られた図案が、銀線と銀線の間が0.5mm以下という超細密な細かさなのです!
裸眼でこの細かさをどこまで見ることができるのでしょう…
しかも、作品はガラスケースに覆われていて、顔を近づけることもできません。
そんな時に大活躍してくれるのがミュージアムスコープ(単眼鏡)なのです!
ミュージアムスコープ(単眼鏡)があれば、肉眼では見えない細部の模様や色彩など思いがけない発見に出会えます。
展覧会を何倍も楽しめますので、ぜひお試しくださいね。
期間:2017年1月14日〜4月9日まで
料金:無料/先着50台まで
※貸出の際、身分証(免許証、健康保険証など)が必要です
※台数に限りがあり貸出できない場合がありますのでご了承下さい
繊細で華麗な並河七宝の世界
とにかく繊細で美しい、超絶技巧の作品をご覧ください。
記載してある寸法もお見逃しなく!
「藤図花瓶:径 8.6cm 高 17.1cm」京都国立近代美術館
「蝶図瓢形花瓶:高 18.0cm」出展:清水三年坂美術館
「藤花菊唐草文飾壺:径 11.7cm 高 10.7cm」出展:清水三年坂美術館
作品と下絵の関係-中原哲泉という存在
今回の回顧展で私が感動したものが下図です。
下図というのはその文字のとおり絵などを描くための下描きの絵のことです。
下絵とも言います。
どんな作品にも必ず下絵は必要です。
そして、この下絵次第で作品の仕上がりが大きく変わってくるくらい、下絵はとても重要なのです。
私は日本刺繍をしていますが、下絵の描き方によって、刺繍がしやすかったりしにくかったりするのはもちろん、その仕上がりも全然変わってしまうということが本当によ〜くわかります。
下絵の輪郭線が繊細であることはもちろんですが、それだけでは刺繍しやすい下絵にはなりません。
刺繍のための下絵と日本画を描くための下絵とは似て非なるものなのです。
刺繍をしたことのある人が描いた下絵はそれはもう刺繍しやすいのです!
こんな風に描いたら刺繍するのは難しいな…、このぐらいの幅だと刺繍するのにちょうど良いな…、まさに刺繍をすることを前提にした下絵です。
刺繍をしたことがない人が描いた下絵は、「えっ⁈ここって、どうやって刺繍すればいいの⁇」って思わず考え込んでしまう部分が出てくることがしばしばあるのです。
自分が経験しているからこそ描ける下図がある
並河靖之には中原哲泉(なかはら・てっせん 1863-1942)という素晴らしいパートナーがいました。
中原哲泉は並河靖之の七宝の下図を手がけた図案家であり絵師として有名ですが、自らも作品を作った七宝師だったのです。
繊細な図案を描ける絵師はたくさんいるでしょう。
でも、繊細なだけの図案では、あの並河七宝の緻密な超絶技巧作品を生み出すことはできなかったのではないでしょうか?
自らも七宝師として七宝作品を創作していた中原哲泉が描く、緻密で繊細なまさに七宝のための下図があったからこそ、並河七宝はこれだけの素晴らしい作品を生み出せたのではないかと思います。
また、哲泉は並河靖之の工房で「工場長」として靖之らと共に七宝の各技術を研究し、釉薬の改良や焼成法にも関わり、作品制作に大きな役割を果たしました。
今回の回顧展では中原哲泉の素晴らしい下図も多数展示されています。
七宝作品ばかりに目を奪われがちですが、この下図もぜひご覧になっていただきたいです。
もちろん、この下図もミュージアムスコープ(単眼鏡)があれば、その緻密で美しい筆蹟に驚愕し、下図の世界にも新たな魅力を感じていただけると思います!
『並河靖之七宝展 明治七宝の誘惑―透明な黒の感性』巡回します!
1月から東京で始まったこの回顧展は巡回しますので、関西方面の方は秋までお待ちくださいね!
東京展:東京都庭園美術館
開館期間
2017年1月14日(土)~4月9日(日)
開館時間
10:00–18:00 (入館は閉館の30分前まで)
※3/24、3/25、3/26、4/1、4/2、4/7、4/8、4/9は夜間開館20:00まで(入館は19:30まで)
会場
東京都庭園美術館(本館・新館)
休館日
毎月第2・第4水曜日(祝日の場合は開館、翌日休館)、年末年始
観覧料
一般:1,100(880)円
大学生(専修・各種専門学校含む):880(700)円
中・高校生・65歳以上:550(440)円
兵庫展:伊丹市立美術館
開館期間
2017年9月9日(土)~10月22日(日)
三重展:パラミタミュージアム
開館期間
2017年10月28日(土)~12月25日(月)
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