花の日本刺繍教室では初級クラス、中級クラスで日本刺繍の基本となる繍方を学んでからそれぞれ自由な作品を制作する上級クラスに進みます。
上級クラスでは半衿や帯や小物など生徒さんがそれぞれ作りたい刺繍作品を制作します。
娘の成人式のために半衿を刺繍したい
2020年の2月、新しく初級クラスに入られた生徒さんから半襟を作りたいと相談をされました。
この生徒さんはもちろん日本刺繍をされるのは初めてです。
日本刺繍は西洋刺繍と違って絹糸を撚って作るところから始まり、左右両手を駆使して世界でも類をみない繊細な繍方をする刺繍です。
初めて日本刺繍を学ばれる生徒さんがいきなり半襟を刺繍するのはとても難しく大変なことなのです。
この生徒さんはもちろんそういったことを踏まえた上で相談されたのです。
お話を聞くとお嬢様が来年2021年に成人式を迎えられ、振袖を着られる時につける半襟を刺繍して作ってあげたいというお母様の愛に溢れたお願いだったのです。
そういうご事情をお聞きしたら何がなんでもお嬢様に日本刺繍の半襟を作ってあげましょう!と私も思わずにはいられません。
今回は特別に初級クラスの課題はひとまず後にして日本刺繍が初めての方でもできる半襟を刺繍することにしました。
コロナのためにお教室が休講に
お嬢様のご希望は『赤い椿の半襟』でした。
どのようなイメージかお聞きして、超初心者でも刺繍ができるような図案と繍方を考えて私が下絵を作成し、生徒さんとお嬢様に刺繍に使う絹糸の色を選んでもらいました。
生徒さんに半襟の相談をされたのは2020年の2月のことでした。
いつまでに半襟を仕上げれば良いのかお聞きすると2020年の12月末に成人式の前撮りをされるとのこと。
11ヶ月あれば1回5時間の月に一度の初級クラスとあとはご自宅で生徒さんが頑張ればなんとか完成させられると思いました。
ところが2020年3月に新型コロナウイルスの感染が拡大し週末の不要不急の外出自粛要請が東京に出され、4月には緊急事態宣言が発令され日本刺繍教室も休講にせざるを得なくなりました。
6月末にやっと日本刺繍教室を再開することができましたが、成人式の前撮りまで6ヶ月を切っています!
上級クラスの生徒さんならまだしも、針を持ったばかりの初心者の生徒さんがこの短期間で半襟を仕上げることができるのかどうか…でも、生徒さんとお嬢様の想いをなんとしても形にしてあげたい。
とにかくやれることは全てやろうと決めました。
生徒さん、本当に頑張りました!
月に一度の初級クラスのお稽古だけでは間に合わないのでと、個人的にマンツーマンのお稽古に何度もいらして今回の半襟に使う繍方を必死になって学ばれました。
そしてご自宅では寝る間を惜しんでひたすら針を持たれました。
実は大変な半襟の日本刺繍
日本刺繍に興味を持たれる方はお着物を着られる方が多く、日本刺繍のこともご存知の方が多いです。
でもご存知だから故なのか、日本刺繍をやってみたいと思われる方の中でも半襟なら手軽に刺繍できると思われている方が結構多いのです。
でも、実は半襟は制作するのにかなり手間がかかるのです。
ほとんどの半襟は左右対象に同じ図案の刺繍を施します。
実はこの同じ図案を再度刺繍するということが結構大変なことなのです。
一つの作品が完成すると仕上がった喜びと同時にやっと終わった!という嬉しさがこみ上げてきます。
半衿の場合左右どちらかの刺繍が完成した時にこの感情が湧き起こります。
でも…終わりではなく…同じ刺繍をまたしなければならないのです…
なんというか一度切れてしまった気持ちをまた奮い立たさなければならない辛さというか…
この複雑な感情は経験した人にしかわからないかもしれません。
お嬢様の成人式の晴れ姿のためという思いがなければ完成させることができなかったのではないかと思わずにはいられないのです。
本当に頑張られて、初めて日本刺繍をされたとは思えないくらい素敵な半襟が出来上がりました!
お嬢様もとても喜んでくださいました。
もちろん私も嬉しくて嬉しくて!
お母様の愛がたくさん込められたこの半襟は、お嬢様からそのお子様へとその優しい愛情が繋がっていくのだろうな…と思わず想像を膨らましてしまいました。
このように日本の素晴らしい伝統技術が受け継がれていくことが本当に嬉しいのです。
この生徒さんは半襟を作り終えられた後に改めて初級クラスの課題を最初から学んでいらっしゃいます。
彼女が上級クラスになってオリジナルの作品を作られる時に、またお嬢様のための作品…帯とかお着物とか…を刺繍されたら素敵だな〜と勝手に想像したりしてしまうのです。
このコロナ禍で家で過ごす時間が増えて刺繍に興味を持たれる方が増えました。
100均などの身近でも材料が手に入り、本を読むだけでもそれなりの形に仕上がる西洋刺繍を始められる方も増えました。
絹糸を撚って刺繍糸を作るところから始める日本刺繍は道具も材料も揃えるのが大変で、その技法も本を読んだだけの独学で覚えられるものではありません。
この機会にちょっと他とは違う凝った刺繍を始めてみたいと思われましたら、世界でも類をみない繊細な技法を駆使する日本の素晴らしい伝統工芸である日本刺繍の世界をご覧になってみてください。
花の日本刺繍教室の詳細はこちらをご覧ください。
スポンサーリンク