日本刺繍が高価な理由 緻密な技法と技が生み出す魅力

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日本刺繍の作品は高価です。千円単位のものはまずありません。
総刺繍の着物などになると数百万円もします。
なぜ日本刺繍の品物は高いのでしょう?
もちろんすべて人の手による手刺繍だからということもありますが、同じ手刺繍でも一般的によく知られているフランス刺繍などの西洋刺繍の品物と比べると格段に高い値段になります。
日本刺繍作品はなぜ高価なのか、それにはちゃんと理由があるのです。

日本刺繍の値段は刺繍の量で決まるわけではない

日本刺繍の作品で大切なもの。
図案、デザイン、色彩はもちろんですが、それ以上に大切なものがあります。
それは繍いの技の技術です。
どんなに素敵なデザインでどんなに素敵な色彩だったとしても、その形が美しく繍い上げられていなければ刺繍としての価値は半減してしまいます。

日本刺繍には型ともいうべき基礎となる繍い方が四十余種あります。
そして日本刺繍は職人がその技を継承してきたからこそ伝統という道筋が確立されました。
この道筋に沿って順を追って技法を正しく学ぶことによって技が磨かれていくのです。

実は結構これってかなりポイントで大切なことなのです。
そして日本刺繍を独学で学ぶのは難しいという理由もここにあります。
西洋刺繍はどのステッチから覚えていっても綺麗な作品を仕上げることができると思います。
でも日本刺繍はそうはいきません。
子供がひらがなを学んでから漢字を覚えていくのと同じで、日本刺繍にも覚えていく段階があるのです。
繍いの技は順を追って正しく学んでいくからこそ慣れないゆえの技術の未熟さを補ってくれて、上達へ導いてくれるのです。

日本刺繍は技術を身につけて、その技術を駆使して自由な表現ができるようになるにはたくさんの学びと長い時間がかかります。こうして身につけた技術に価値があるのです。

たくさん刺繍がしてあっても、その技術が未熟ならその価値は半減します。
刺繍の量が少なくても、より緻密な技法を高い技術で刺繍してあれば高価なものになります。
たくさんの量の刺繍を高い技術で刺繍してあればとてもとても高価なものになります。

日本刺繍の作品は刺繍の量だけではなく、その刺繍の技法と技の巧みさで価格が決まるのです。

日本刺繍は糸から作ります

日本刺繍を施すのは正絹の生地です。
正絹の生地に絹糸で刺繍をしていきます。
そして西洋刺繍との違いは何と言っても糸から作るということ。
正確には糸を撚る(よる)ところから始まるのです。

日本刺繍で使う「釜糸」

上が撚りをかけた糸。
下が繭から取り出した絹糸10本の束の釜糸。

日本刺繍で使う糸は絹糸で『釜糸(かまいと)』と言います。
蚕の繭から繰りとったそのままの状態の細い絹糸が10本〜12本集まった束で、撚りがかかっていません。
『撚り棒』という道具を使ってこの撚りがかかっていない釜糸に撚りをかけて刺繍糸を作ります。
刺繍する図案や刺繍の技法に合わせて糸の太さはもちろん、撚りの加減を変えたり、色を混ぜたりと刺繍糸を作っていくのです。

①撚り棒のフックに釜糸をかけます。

②両手を使って釜糸に撚りをかけていきます。

糸の太さを変えたり、混色の糸も作れます。

西洋刺繍にはない日本刺繍の緻密な繊細さ

日本刺繍の基本中の基本は『地の目(じのめ)』を見るということです。

地の目ってなに?って思いますよね。
今着ている洋服の生地をよ〜く見てみてください。
Tシャツだとわかりやすいと思います。
よく見ると洋服の生地に山と谷があるのがわかりますよね。
これが地の目です。
正確にいうと縦糸の縦地の目と横糸の横地の目があるのですが、日本刺繍でいう地の目は横地の目のことになります。
日本刺繍の基本はこの地の目の谷の部分に糸を引いていくことから始まるのです。


日本刺繍の技法 ①地引繍(じびきぬい)

ただ線が引いてあるだけではない日本刺繍の技

『菅繍(すがぬい)』という日本刺繍の技法があります。
菅繍は先に説明した生地の地の目に糸を引いていく刺繍です。
一見、地の目に沿ってただ糸がまっすぐに引いてあるだけの刺繍(もちろんそれだけでも細かい作業なのですが)に見えますがよく見ると…
細かく生地に綴じつけてあるのがわかりますか?

線を引いただけでは糸が浮いてしまっていてこのままではたるんでしまったり、糸が引っかかってしまったりするので細い綴じ糸を使って生地に繍いつけていくのです。
図解するとこんな感じです。
動画をご覧になっていただけるとよりわかりやすいと思います。

日本刺繍はその制作過程にも価値がある

日本刺繍はこの菅繍のように、一見しただけではわからないような緻密な技がたくさん施されているのです。
それはまるで日本の美意識の塊のような繊細な技術です。
日本刺繍は技の芸術でもあるのです。
出来上がった作品の美しさだけに価値があるのではなく、日本刺繍はその制作過程にこそ本当の価値が見えてくるのではないかと思うのです。

でもそれは実際に日本刺繍をしたことのある人ならいざ知らず、何も知らない人が見たら全然気がつきもしないことでもあるのです。

日本刺繍は職人がその技を継承して伝えてきたことによって日本の伝統技術として確立されましたが、またそれゆえに外部への発信ということに関してはおろそかになっていました。
良いものを作りさえすれば売れるという時代に縛られ続けた結果、これだけ素晴らしい日本の伝統技術でありながら日本人のほとんどの人が西洋刺繍は知っているのに日本刺繍は知らないという現状を作り上げてしまったのです。

日本刺繍をたくさんの人に知ってもらうためには完成した作品だけを見てもらうだけではなく、その制作過程をもっと可視化させていかなければいけないのです。

だからこれからは、日本刺繍に携わる者の一人としてどのように日本刺繍の作品が作られているのか、どのような技術を使っているのかをどんどん発信していって、たくさんの人に日本刺繍を伝えていきたいと思います。

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