下絵は作品の仕上がりを左右します
今月から始まる日本刺繍教室の初級クラスの準備をしています。
日本刺繍が全く初めての方ばかりなので、ハサミ以外の日本刺繍に必要なお道具一式を揃えてお渡しするのです。
その中には額や半襟にする作品の生地も含まれています。
一般的な日本刺繍教室では、生徒さんがご自分で下絵を生地に写すことがほとんどですが、私の主宰する日本刺繍教室では私が生地に下絵を描いてお渡ししています。
これには意味があります。
日本刺繍はとても繊細な技法を駆使する刺繍なので、特に初心者は下絵次第で良くも悪くもなってしまうのです。
ある程度ご自分で刺繍ができるようになってきたら、自分で下絵を写しても綺麗に仕上げることができると思います。
でも、初めて針を持つ初心者の方にとっては、少しでもゆがみがあったり、線の太さが違ったりしていると、それだけでもとても繍いづらくなってしまって、それが作品の仕上がりを左右することになってしまいます。
ちょっとしたことで繍いづらくなってしまって、日本刺繍がつまらなくなってしまってはもったいない!
まだまだ技術が未熟だからこそ、頼るべきところは頼ってしまえば良いのです。
せっかくご縁があって始めた日本刺繍なのですから、楽しく上達して、長く続けていってもらいたいと思うのです。
そのために、初心者の方でも繍いやすく、仕上がりも綺麗になるように、私が下絵を描いてお渡ししているのです。
初心者だからこそ良い道具を使うべき
新しく趣味や習い事を始めようとして、新しく道具を揃えなければならなくなった時、どちらの考え方をしますか?
①初めてだから、上達するかどうかわからないし安い道具でいいや。
②初めてだから、ある程度ちゃんとした道具を揃えよう。
①を選んだ人は、新しく始めた趣味や習い事がよほど気に入ったか好きになったかでもない限り、すぐにやめてしまうでしょう。
なぜなら、なかなか上達しないからです。
②を選んだ人は、新しく始めた趣味や習い事がだんだん楽しくなってきて、思いのほか長く続けていくことができるでしょう。
なぜなら、上達していくからです。
例えばゴルフのクラブ。
例えばテニスのラケット。
例えばスキーの板。
経験したことがある方ならすぐにおわかりになると思いますが、性能の良い道具に変えただけでいきなり飛距離が伸びたり、上手に打ち返せたり、滑りやすくなったりしませんでしたか?
そうなのです、良い道具は、初心者の未熟な技術を補ってくれるのです。
でも、ただでさえ初めてのことばかりで不慣れな作業をしている時に、操作性やクオリティーの低い道具を使えば、その使い勝手の悪さが未熟な技術に拍車をかけてしまいます。
そうなると、なかなかうまく作業ができないのでつまらなくなり、嫌になってきて、もうやめた!…ってなってしまうのです。
これは私が愛用している日本刺繍の握りハサミです。
刀と同じ製法で作られる手打ちのハサミです。
15年以上も前のお値段ですが、30,000円くらいしました。
でも、手打ちでハサミを作れる職人さんがどんどん減ってしまって、今では60,000円近くするそうです。
このハサミなのですが、ちょっと糸に触れただけでスパッと切れます。
糸を切る時にスパッと切れるハサミとなかなか切れないハサミとでは、当然切れる時間が違います。
その1回はわずかな時間でも、何百回と糸を切る作業がある日本刺繍では、その時間の積み重ねは大きなものになります。
また、スパッと切れた糸と、何回もチョキチョキして切った糸とでは、作品の仕上がり具合が違ってきます。
最初からこんなに高いハサミを使う必要はありませんが、私のお教室では100均のハサミだけは絶対に禁止にしています。
せめて1,000円くらいのちゃんとしたメーカーの握りハサミをご用意していただくようにしています。
もし、これから何か新しいことを始めようと思われた時は、最初から良いお道具を使うようにしてくださいね。
それが上達の早道であり、楽しく続けていける秘訣でもあるのです。
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